Hara Kazutoshi presents 着信アリーmy Love

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或る刺身の一生

先日、横浜に住んでいる方の家に集まり、『男はつらいよ』を夜通し見るという会に参加した。明け方に近くの魚市場にご飯を食べに行こうということになり、徹夜明けだがみんなで元気よく市場へ出発した。だが近くと言っても徒歩三十分あり、寝不足もあって市場の店に着いた頃にはヘトヘトであった。
店のメニューをみると、刺身とウニが山盛りのおまかせ定食が1000円なので、われわれの期待は高まり、みんなおまかせ定食を注文した。しかし、実際定食が出てくると、疲労と睡魔と一晩中飲んでた満腹で、その刺身とご飯のボリュームに我々は意気消沈したのであった。11人で店に行ったが、完食出来た人はいなかった。
あんなに刺身がありがたくなかった状況は、未だかつて無かったのではないだろうか。普通のコンディションの時にまた行ってみたいが、もし自分が刺身だったら、あの場の雰囲気に「もう刺身の時代じゃないのかなあ」と思い悩んでしまうだろう。


ということで刺身は、11人の客が完食しなかったその件で、「もう自分の時代じゃないのかなあ」と感じたのであった。その夜、刺身は引退の決意を固めた。同じお盆のおしんこや、マグロのカマをほぐして甘く煮たやつから「俺もよく残されるから気にすんなよ」と慰められたが、チームのメインを張っていた自負から、引き際が肝心と心得ていた。引き際を誤ると、惜しまれるどころか、「晩節を汚した」とそしりを受けることもあるのだ。今が潮時である。「引退して、後進の指導にあたろう」と。
しかし、フロントからの熱心な留意をうけた刺身は、やはり現役の続行をすることにしたのであった。