Hara Kazutoshi presents 着信アリーmy Love

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Hara Kazutoshiのクラブレポート最前線 最終回「さらばGHOSTWORLD!クラブレポート暁に死す」

GHOSTWORLDが本号で最終号ということで、本クラブレポートも今回で最終回である。
GHOSTWORLDは、渋谷のクラブWOMBのマンスリーイベント「月刊ウォンブ!」で販売されるため、クラブに見識の深い読者の方も多いと思われる。そんなクラバー諸賢に向けて、毎月最新のクラブ情報をお送りするのは大変なプレッシャーであったが、最後まで走り続けてこられたのは、編集のイーニドとレベッカ*1の二人のおかげである。この場をお借りして感謝を申し上げたい。
イーニドとレベッカは、若く麗しい白人女性である。Facebookを通して連載を依頼され、連載開始当初から連絡や原稿のやりとりもメールのみだったので、二人とはまだ会ったことがなかった。
GHOSTWORLDの連載も今回で終わりということで、わたしは二人に会いに行くことにした。二人からは連絡先の住所をもらっていたので、わたしは愛車の74年型ダッジ・チャレンジャーに乗り込み、北関東のある町に向かった。
そこは、家屋もまばらな山間の町だった。二人が住んでいるという住所に着いても、ぽつんと廃屋があるのみである。長い間、人が住んでいた形跡もない。
わたしは、通りかかった近所のおばさんに声をかけてみた。
「こんにちは!ここらへんに住んでいる、二人の外国人の女性をご存じないですか」
「知らないねぇ、ここの家ももう何年も人は住んでないし……」
「そうですか……」
ともかく、教えてもらった住所には、彼女たちは住んでいないようである。
そういえば、連載中に、GHOSTWORLDの見本を一度も送ってもらったことがないことを思い出した。「月刊ウォンブ!」にも行ったことがないので、わたしはGHOSTWORLDの現物を見たことがなかった。いや、そもそもGHOSTWORLDという雑誌は存在するのだろうか。そして、イーニドとレベッカという人物は何者なのだろうか。
その夜、GHOSTWORLDともなじみの深い、「月刊ウォンブ!」の主催者の仲原氏に会いに行くことにした。仲原氏はうちの近所にある、行きつけのバーで働いており、彼とは顔なじみである。
わたしは、仲原氏にイーニドとレベッカの家を訪ねたこと、GHOSTWORLDのことについて話した。仲原氏は、わたしの話の間中、怪訝な顔をして黙って聞いていたが、ついに口を開いてこう言った。
「すみませんが……あなたとお会いしたことってありましたっけ……?それにGHOSTWORLDとかウォンブってなんのことですか?あの渋谷のクラブは「ウォンブ」じゃなくて「ウーム」って読むんですよ」
どうやらわたしのことも、「月刊ウォンブ!」やGHOSTWORLDのことも知らない、という口ぶりである。
なにかがおかしい……と思った次の瞬間、わたしはあることに気がついた。そもそもわたしには、行きつけのバーなどなかったのである。それに、わたしはFacebookをやったことがないどころか、パソコンも持っていないし、車も免許も持っていなかった。
そして、わたしが今居るのは、バーではなく、自分の部屋の中だった。目の前の机の上には白紙の原稿用紙が置いてあり、どういうわけか、誰かに頼まれたわけでもないのに、クラブに関するコラムを書こうとしていた。わたしはクラブに対する知見を持っていないので、そんなコラムなど書けるはずもないのだが。
(GHOSTWORLD VOL.9)

*1:『GHOSTWORLD』の2人の編集者のペンネームがイーニドとレベッカだった