Hara Kazutoshi presents 着信アリーmy Love

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Hara Kazutoshiのクラブレポート最前線 第3回 潜入ルポ「ギャング団」

暴力や裏社会との関係を明け透けに語るギャングスタラップの歌詞。しかし、そのリアルとフィクションの曖昧な境界線に、暗い魅力を感じてしまうという人も多いのではないだろうか。
今回筆者はギャング集団に潜入取材をするため、あるギャングに詳しい専門家のI氏に話を伺った。
「体長は5、6cm程度ですが、鋭い前足を使い自分より体の大きい魚やカエルも捕食するタガメは、その凶暴さから『水中のギャング』と呼ばれています。獲物に針状の口を差し込んで、消化液を流し込んで溶かした肉を吸って食べるため、タガメに食べられた生物は皮と骨しか残らない」
初っ端からあまりにも残虐なエピソードに絶句する筆者。しかし、取材のために彼らの居場所を聞き出さなければならない。
タガメは水のきれいな水域にしか住めないため、関東では生息している地域は限られています。生息場所が知られると、愛好家に乱獲される恐れもあるので、記事に実際の場所を載せないという約束ならご案内いたします」
居場所を明かさない条件、という取材制限が今回の取材の危険さを物語っている。I氏に場所は秘密にするという条件で、翌日にギャングの所へ案内をしてもらうことになった。


しかし翌日、I氏は待ち合わせ場所に姿を現さなかった。その後もI氏とは連絡が取れず、ついに消息が分からなくなってしまった。こうなってしまうと今回の取材もここまでである。
それから三ヶ月ほど経ったある夜のことである。筆者が床につこうと部屋の明かりを消した時、少し開けていた窓から何者かの呼び声がした。I氏の声である。筆者は驚きつつも、外の暗がりにいるI氏に話しかけた。
「Iさんですか……?最近姿を見なかったので心配しましたよ。さあ、そんなところにいないで中に入ってください」
と、部屋の明かりを点けようとすると、I氏は静かに、しかし強い調子で制止した。
「やめてください!こちらに近づかないように。私はもはや元の姿では無いのです……
あれは、あなたとお会いしてタガメについて話した日のことです。その帰り道、私は街灯の下に小さな足あとを見つけました。私は専門家ですので、それがすぐタガメの足あとだと分かりました。その足あとをたどって行くとマンホールの下に続いており、地下道に降りて、さらに2、3日歩き続けると、気がついたら私は「タガメの町」にいたのです。
周りには沢山の巨大なタガメがいたので、私は人間とばれないようにタガメと同じように生活をしました。三ヶ月ほど経った頃、私は隙を見て逃げ出しましたが、私の姿はすでにタガメのようになってしまっていたのです。タガメの町で何ヶ月も過ごしたから……もう手遅れ、あと数日で私は完全にタガメになってしまうでしょう」
筆者は「Iさん!」と呼びかけ窓を開けたが、もうすでにI氏の姿はなかった。
(GHOSTWORLD VOL.3)