Hara Kazutoshi presents 着信アリーmy Love

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Hara Kazutoshiのクラブレポート最前線 第1回「私のクラブ顛末記」

2013年に渋谷のクラブ・WOMBで1年間行われたマンスリーイベント、月刊ウォンブ!に合わせて『GHOSTWORLD』というインタビュー誌が毎月発行、販売されていました。そこに私が寄稿していた『Hara Kazutoshiのクラブレポート最前線』という連載(全9回)をブログに公開したいと思います。
連載するにあたってテーマを決めた方がいいと思い、月刊ウォンブ!がWOMBのイベントということで、安易にテーマを「クラブ」に限定しました。私自身クラブに全く詳しくないのですが、テーマを制限された方がそれに沿ったアイディアも色々思いついて逆に良かったのかなと思います。



Hara Kazutoshiのクラブレポート最前線 
第1回「私のクラブ顛末記」


クラバーの皆さんこんにちは。原と申します。初めまして。
本誌がWOMBのマンスリーイベント「月刊ウォンブ!」の開催と合わせて販売されるということなので、今回は僭越ながら私のクラブ体験を書いてみたいと思う。
ダンスミュージックは好きだったが、元来クラブに遊びにいくタチでもなかった私。もっぱら家で聞いていた。そんな私の初めてのクラブ体験は、大学の友人が小さなクラブを借りて主催したDJパーティーだったと思う。大学生(しかもさえない)のパーティーだったので、その場にいる人は出演DJたちとその知り合い数人。フロアの隅のベンチに座って、誰もいないフロアを見つめながら、爆音で流れるミニマルテクノを夜10時くらいから始発まで聞き続ける、というのが私のクラブの原体験である。DJを終えた友人に「けっこう上手く曲を繋いでてよかったヨ」とか言ったりして。
しかも何故か彼らは定期的にパーティーを開催していて、その度に客はいなかったので、私がそういう体験をしたのは一度ではなかったが、ミニマルな音楽は好きなので結構楽しかった記憶がある。


そんな数少ないナイトクラビング経験の中で、特に印象深かったのが、クラフトワークも出演した2002年のエレクトラグライドである。
クラフトワークが過去の名曲をオリジナルの感じでやったり、The Mix風にやったりで、大変盛り上がった私は、柄にも無く軽快なステップを踏み、「フゥ!」と腹から出てない声であいの手をうった。あと、楽しそうにリズムをとっているメンバーに、クラフトワークの人でも結構動くんだ、って思った。
他にもライブではスクエアプッシャーが出ていて、MIDIベースで音源を操作していたが、これも大変面白かった。
また、フードとか売ってる休憩スペースで、明らかにお薬を頂いている感じのお姉さんが、かたっぱしから机をなぎ倒していたので、これはこれでクラプっぽくてイイね!と思いながらその場から出来るだけ遠く離れたりした。


エレクトラグライドには友人二人と連れ立って行ったのだが、夜も明けた帰り際に「あれスクエアプッシャーじゃね?」と思われる白人男性を見かけたのである。
「トレードマークのヒゲが生えていないが、ライブではよく見えなかったけど最近は剃っているのかも」「たこ焼きを食べているが、一般の白人男性がたこ焼きを食べるとは思えない。差し入れかケータリングに違いない」と協議の結果、友人の一人が彼に近づき「アー・ユー・スクエアプッシャー?」と話しかけ、困惑している白人男性に自作のデモCDRを渡してこちらに戻ってきた。
その後、帰りながらよくよく考えたら「あれ絶対スクエアプッシャーじゃないよね」ってなった。
スクエアプッシャーと間違えて知らない白人男性に話しかけたうえに、自分のデモ音源まで渡した友人は羞恥のあまり「ヤベェよ……シャレになんねえよ……」と落ち込んでいたが、そこまでではないだろって思った私ともう一人の友人は「そんなことないって」と言って慰めた。
そんな朝方の帰りの電車の中、朝日に照らされた私たちの背中は、まさにクラバーのそれであった。
(GHOSTWORLD VOL.1)